本戯曲は、トロイア戦争時の総大将、アガメムノンにまつわる話から生じる。アガメムノンは凱旋帰還をしたものの、不貞の妻に殺害される。妻は息子オレストによって復讐される。それより以前アガメムノンは戦争の際、女神アルテミスへの謝罪として長女イフィゲーニェを捧げた。イフィゲーニェは一命をとりとめたが遠国タウリスに流され、事情を知らぬそこの王に救い出され、神官として仕える。
劇はイフィゲーニェが王から求婚される場面で始まる。イフィゲーニェは断わる。執拗な王に対して自らの素性、特に先祖からの呪われた事情を話す。この時まだイフィゲーニェは両親の悲劇を知らないが、祖父以前のおぞましい悲劇を語る。事情を知った王はイフィゲーニェを疎ましく思うようになる。流れ着いた異国の者二人を処分するよう言い渡す。
この二人はイフィゲーニェの弟オレストとその従弟であった。再会し両親の事情を知ったイフィゲーニェに対し、弟らは共に逃げようと提案する。しかしイフィゲーニェは王に対して恩義を感じている。王とイフィゲーニェ、オレストとの会話が続き、最後には王はイフィゲーニェらを帰国させる。ギリシャ悲劇では女神が解決するとなっているところをゲーテは人間の心の問題として解決させた。この辺りが評価されている。
氷上英広訳、ゲーテ全集第4巻、人文書院、昭和35年
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