2019年9月7日土曜日

鈴木光太郎『オオカミ少女はいなかった』ちくま文庫 2015

実際は違うのに、あるいはかなり怪しい理解でも事実として信じられている風説、それは神話あるいは伝説というべきか。これらについて例を挙げて説明していく。
本全体の題名にもなっているオオカミ少女。たいていの人は聞いているだろう。日本式に言えば大正時代の半ば頃、インドで狼に育てられたという少女二人が発見され、全く人の教育は施せず、幼年期と少女時代に亡くなった。本書によれば、確かにこの二人の少女はいたものの、狼などに育てられたわけはない。狼は人など育てない。ただ写真も残っており、専門家による著書もある。写真の疑わしさを指摘している。専門家も実際に二人の少女を観ているわけでなく、自らの理論補強に使えたので支持したらしい。
このような神話が生まれ語り継がれる理由として、人がそう思いたいからだとの指摘は納得的である。
他にもサブリミナル効果、知能の高い馬の真実、データの捏造等々、興味深い話題について解説がなされており、読んでいて面白い書である。

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