ソ連時代のグルジア製作映画。舞台もカフカスのグルジアである。時は1864年。時のロシヤ政府はチェチェン人をトルコに移住させようとしていた。これが背景である。
山段に家々が並ぶ、チェチェン人の村に近隣の若者が牧草地を借りたいと交渉に来ている。村長たちは貸してやりたいが、ロシヤの監督官の指令でできないという。若者は帰り際に村長の娘エリソーと愛の誓いを再確認する。
隣村は既にトルコへの移住へ向けて、全村出発していた。それを見て自分たちは反抗もしていないし、移住を強制されることはないと言い合う。しかしコサック隊は無知な村民をだまそうとする。移住するくらいならここで死んだ方がましだと村長は言い出す。それなら請願を書いたらどうかと提案され、同意し村民全員がその請願書に署名する。その後、この書類は移住の承諾書だとコサックらは言い、村民を驚愕させる。
あの若者は奔走し、その村は移住しなくていいというロシヤからの許可書を取り付けていた。エリソーを通じて村長に手渡すが、もう村を挙げて移住を始めており、手遅れだと言われる。エリソーは移住隊を抜け出し、村に帰り火を放つ。炎上する山段の集落。それを移住隊の村民が見上げる。実はこの時、映画では入道雲のような雲(か煙)が画面に現れる。夜のはずなのに昼の雲といった感じである。これで村が燃えている様を表しているらしい。特撮技術が十分でなかった時代である。エリソーは移住隊に急いで帰り、確認の点呼に間に合う。
移住隊のうち、病気の女が幼い子供をエリソーに託し死ぬ。残りの女たちは泣き叫ぶ。村長は元気を取り戻すため、音楽を始めさせ、皆に踊らせる。号泣にしろ、踊りにしろ、感情表現が豊かな民族らしい。
そこへあの青年がやってくる。村人は村から追い出されたのも、青年のせいだと非難を始める。エリソーはそれに対して移住に同意したのは村人全員ではないかと反論する。
青年にエリソーに一緒に来てくれと頼む。彼女は預けられた幼い子供を青年に渡すが、自分は父親や家族を捨てるわけにいかないと答え、トルコへ向かう村民と運命をともにする。ヨーロッパのような大陸では、政治的要因、戦争の結果などで歴史上、何度も強制的な移住が行なわれた。この映画の題材もそのうちの一つである。
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