ホームズ物の長篇としては最後の作品。『緋色の研究』と同じく二部形式をとっており、第二部で過去に遡り、事件の起こった原因が説明される。
ホームズは届いた暗号を解読する。そこから犯罪が示唆される場所に行く。殺人事件が起こっていた。しかし謎が多い。最後に解明され、事件が起こったいきさつが、昔のアメリカに舞台を移して説明される。
第二部は冒険小説と言っていいが謎解きがある。ホームズ物であり謎自体の新鮮さが売りではない。ただ第二部も推理小説的であり、『緋色の研究』とはその点違っている。
長篇推理小説で二部に分かれ、後半で事件が起こったそもそもの原因が説明される、といった構成は19世紀の型であった。ガボリオの小説は典型である。20世紀に書かれ、その構成をとる『恐怖の谷』は最後の例かもしれない。
客観的に見れば『恐怖の谷』は、ホームズの長篇小説の中で最も優れていると思う。
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