著者は元々物理学が専門で、これまで経済数学の直観的方法という経済数学の解説書を新書で出しており、経済学徒からも注目されている。本書はその著者が経済学それ自体を解説しようとする書であり、関心が高くなる。
一般的に経済学の勉強では、3つの分野の学習が必要となる。一つはミクロ経済学で、個別の経済主体(個人や企業など)の最適化行動(満足の最大化や利潤の最大化など)を探る分野である。経済学の保守本流である。もう一つはマクロ経済学で、経済全体の動きを対象とする。GDPの成長、失業、金融政策など経済政策の問題を扱う。最後は統計学であるが、これは実証のための方法であり、経済学そのものではない。
さて本書は以上のうちマクロ経済学を解説している。マクロ経済学は多くの現実の経済問題を扱う。ミクロ経済学がかなり抽象的な議論を展開するのに対し、マクロはより実際的であり、幾つかは常識化しているだろう。政治家が景気対策のため財政支出の増大を求めたとしても、ケインズ経済学を知っていると感心する者はいないだろう。その現実と関わり合いの深いマクロ経済学が本書の対象である。
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