書名を見るとかつては売れたが忘れられた作家を書いているのかと思うが、実際は周知の大家も取り上げている。かつて有名だった作家も併せて取り上げている近代文学に関するエッセイという感じである。結構有名な作家について、それほどでもないと評価が書いてある。さらに裏事情のような雑学も披露しており、得るところが中にはある。
こんな本を読もうとする人は読書好きだろうから、出てくる作家の大部分の名を知っているだろう。文庫になれば売れているという意味であり、かつて盛んに出されていた文学全集に入れば、それだけで古典とまで行かなくても傑作という評価を与えられたわけだから、作家としては御の字であろう。それが時代を経て評価されなくなる作家がいる。ここでは言及されていない作家だが、山本有三や武者小路実篤などは最近さっぱりのようである。逆に、松本清張を中公の日本の文学に入れるべきかの議論は有名で本書にも書いてあるが、江戸川乱歩の、それも『偉大なる夢』のような作品でさえ岩波文庫に入るようになっている。以前なら夢にも考えられなかった。そのような評価の変遷の原因についての考察があればよかった。
45ページに文学全集の意味を勝手に誤解して怒っている女学生の話が出てくるが、全くおかしくない。こんな者がいると思えないし、いたとしてもこういう話を面白く思える人はこれまた理解不能である。
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