著者がこれまで読んできた、また映像でみて来た、いわゆるミステリーを自分の経験と好みであれこれ語った本である。本だけでなく、コロンボやその後に放送したテレビドラマなども語る。結局のところ自分の好き嫌いを書いているだけなので、そういう意見もあるのかと思う本である。著者は基本的にミステリーが好きでない。書名はそれの反映である。世評に高い作品もつまらないと思えばけなす。一方で自分が好む、あるいは評価する作品も挙げている。例えば筒井康隆の『ロートレック荘事件』を称賛している。
本書は好き嫌いだけでなく、作家に関する情報もある。ミステリーに関係ない文も多い。読んでいて気になるところがある。大岡昇平の『事件』を小松川高校事件に取材した小説とある。(p.37)これを読んでびっくりした。小説も映画もみたが知らなかった。大島渚の映画『絞死刑』はまさに小松川高校事件を基にしている。厳密に言えばその犯人を描いている。『事件』もこの事件が基なのか。犯罪など似ているところがあるから、そうでないとは言えないが。基にしたところがどこなのか教えてもらいたいものである。また谷崎潤一郎と江戸川乱歩の関係について推測を述べている。(p.39)これなどは谷崎自身の文があるから、なぜそれを引用しないで忖度しているのか分からない。
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