2019年5月17日金曜日

宇宙からのメッセージ 昭和53年

深作欣二監督、東映京都=東北新社=東映太秦映画村、105分。

「スター・ウォーズ」ばりの宇宙を舞台にした空想科学冒険映画。いやずばり言うと、スター・ウォーズのパクリ映画である。日本公開が米より一年遅れたため、その間にスター・ウォーズを換骨奪胎した映画を作って儲けよう、そういう東映の岡田社長の指令の元に作成された映画だそうだ。

遥か彼方の惑星は敵の星に占領されている。この惑星を助けるには八つの玉が指し示す勇士八人が必要である。八犬伝の要素を入れている。それを捜しに志穂美悦子扮する姫が地球に来る。元軍人のビッグ・モロー(テレビの戦争物で有名だった)や、真田広之、外人の若い男女などに会う。彼らに玉が降ってきて、惑星を助けに赴く。途中の星で、悪い皇帝に簒奪された王子役の千葉真一も参加。
惑星では敵方と戦う。今は荒廃し敵に占領され惑星の中央にある動力源を破壊するため真田と若い外人が宇宙艇で星の中央部へ入り込み、心臓部を爆破、星も木端微塵となる。

敵方をやっつけてしまったので、惑星を爆破する必要はないと思うが、スター・ウォーズのコピーである必要上、爆破せざるを得なかったのだろう。
よくもまあパクリで訴えられなかったと思わせる映画である。当時はこの手の便乗映画が米でも多かったようだ。
文字通り呆れる映画である。東宝の「惑星大戦争」も観るに耐えなかったが、ここまで本家のパクリといったものも珍しくそういう意味で価値がある。西洋に劣等感を持つ人は恥ずかしさのあまり憤死してしまうのではないか。

2019年5月13日月曜日

岡義武『明治政治史』岩波文庫 2019

岩波文庫の上下2冊で刊行、上の初出は昭和37年、下は何回かの推敲を経て、著者自身の最終稿は昭和61年である。著者の死後、著作集刊行時に弟子によって編集された。

明治維新の元になった幕末から稿を起こし、明治が終結し大正初めの政治動向までを中心にし、必要に応じて社会、経済にも触れている。
通常の歴史書と比べて、例えば明治維新、日清、日露の戦役で、普通ならかなり詳しく記述してあるところを簡単にしか触れていない。つまり歴史事実の単なる伝達でなく、歴史の因果関係を理解させる、のが本書の狙いなのであろう。

これはまさに歴史書に望みたい態度である。世の中には歴史好きが多いから、歴史の細かいところまで知りたい需要があるのだろう。しかし自分のようなあくまで歴史の流れの意味や因果関係を知りたいという者にとって、多くの歴史書は事実の羅列といった印象を持つ。
かつてのマルクス主義史観のような、図式に無理やりあてはめる歴史観への反動か、学術的中立的のつもりか、資料集の解説のような記述を延々とする歴史書が幅を利かせているようである。それらは退屈でしょうがない。資料を踏まえた解釈を知りたい。

まさに本書は望んでいたスタイルである。本書の内容はその後の研究を踏まえ、今なら改定の必要があるところがあるだろう。そういった歴史書を出してもらいたい。

池上英洋『西洋美術史入門』ちくまプリマー新書 2012

西洋美術史なのだが、他書とは差別化を図っている。

絵の読み方、社会的背景ほかが解説されているが、まずスケッチの技術と視覚情報の言語化が必要と説く。つまり絵を見て簡単なスケッチする、更にある絵の説明を聞きそれを絵にする、という訓練である。これらの訓練が美術史を学ぶ上で最初に必要なのだと言う。
続く絵を読むの章では、記号、イメージと象徴、アレゴリー、アトリビュート、図象、イコロジーなどが説明される。更に絵が生まれた社会的背景の説明がある。

読んで勉強になったと思わせる書である。

2019年5月8日水曜日

西岡文彦『絶頂美術館』マガジンハウス 2008年

ヌードから見た西洋美術論。

西洋絵画にヌードが多いのは周知のとおり。それが神話や宗教に関するものに、かつては限られていたのも絵画に関心があれば知っているだろう。近代ではこの発想に挑戦する絵画が現れた、などが書かれている。ある意味当然かもしれないが、古代からのヌード画も性に対する人間の興味も伴っている、と書かれている。いわば神話等に素材をとったのは、表面上覆い隠すための方便であると言える。

アカデミック派の絵画で、かつては印象派の陰に追いやられていたカバネルのヴィーナス誕生に始まり、美術史上有名な作品のどのように解釈するか、目の付け所などが興味深く記述されていて、読んでいて楽しい本である。

2019年5月7日火曜日

北陸代理戦争 昭和52年

深作欣二監督、東映、98分、総天然色。
福井を舞台にした仁義なき戦いである。仁義なき戦いという名を冠せず、主役が菅原文太でなく松方弘樹である。
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福井のやくざ同士の争い、また福井へ大阪のやくざが乗りこんで来る、その大阪方との戦いが主題である。松方の親分の西村晃は、ずるくて臆病な男、仁義なき戦いでの金子信雄に相当する。松方の叔父貴分がハナ肇である。一途な松方に対し自分の地位をなんとか築こうとし、松方の情人の野川由美子も奪ってしまう。ハナは松方を牽制するため大阪のやくざと手を組む。大阪勢は北陸をわがものとする気であったので乗りこんで来る。

松方が一旦恭順なように見せかけ、大阪やくざの子分になる。しかし最後は啖呵を切って、さかずきより血の方が濃い(土地への愛)と怒鳴る。松方の新しい情人となった野川の妹、高橋洋子の激しい生き方は心に残る。ハナの演技もさすがである。
首だけ出し身体は地面に埋めて車で飛ばす場面は北野武のアウトレイジでも使っていた。

本作はこの映画のモデルとなった人物が殺され、という挿話が必ず語られるが、そんな話をする必要もなく映画自体が面白い。
これも再見であるが、正直仁義なき戦いシリーズより面白いと思った。

2019年5月6日月曜日

資金源強奪 昭和50年

ふかくさきんじ監督(平仮名表記になっている)、東映、総天然色、92分。
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ムショ入りしても報われなかった北大路欣也の主人公が、仲間二人とやくざから大金をせしめる。しかもやくざの賭博の現場に殴り込み、その売り上げのカネを強奪するのである。やや非現実だが(あんなにうまく奪えるかと思う)そこは映画である。3億以上のカネだった。
奪われたやくざは、つながりのある清廉とは言い難い、梅宮辰夫扮する不良刑事に、カネを奪還するよう依頼する。仲間の一人がばれて捕まり、北大路が首謀だと吐く。北大路にカネを持って来させ、それを奪ったもう一人の仲間を梅宮が追いかける。仲間はトラックにはねられ死ぬ。鞄にはカネは入ってなく紙切れの束だった。

その後梅宮は北大路からカネを奪い返す。やくざのところへ持っていくと、もっとあったはずだと言われ報酬ももらえない。梅宮と北大路は組み、やくざからカネを取り返す算段を立てる。北大路がやくざのところに行く。その時通天閣の屋上から梅宮がライフルで、次々とやくざたちを狙撃し斃す(この辺も映画の特権を活かし、都合よく斃す)。
カネを再び奪った北大路らであるが、そこは自分のものとすべく、喧嘩になる。残りの仲間も死ぬ。北大路は梅宮を殴り倒し、ジープで去る。梅宮は倒れた体の下に数千万円の札束を持っていた。梅宮の若い妻が欲しがっているマンションがこれで買えると言う。

最後に北大路は飛行機で外国へ高飛びする。その前に自分を知っている女に会う。前に逃走に利用し、その代わり胸飾りを買ってやった女である。あわや警察に通報するかと思いきや、胸に飾りをつけている女は何も言わない。

こういう大金強奪映画は最後にそのカネが飛散するなど、誰のものにもならないといった結末をよく見る。ここでは北大路はうまくせしめ逃げる。北大路が元々好きだった情婦の大地喜和子は入所中、別のやくざの女になり、結局北大路からも捨てられる。

2019年5月3日金曜日

仁義なき戦い 昭和48~49年

深作欣二監督、東映の総天然色映画。五部作。
実録路線やくざ映画の金字塔としてあまりに有名な作品。

国立フィルムアーカイブの深作欣二監督特集で、二日間に渡って観た。最初の日に3部まで、明くる日に残り2部を観た。
何十年ぶりかの再見である。正直いって期待したほどの感激はなかった。期待が大きすぎたせいか。二日間でまとめて観て、やくざ同士の殺し合いを嫌というほど繰り返され、食傷気味になったのもその一つかもしれない。以前は一週間に一本の割合で観た。
菅原文太演じる主人公は筋が通っており、金子信雄演じるボスはあくまで自分勝手で情けない男である。少し型にはまりすぎかとも思った。

また本作には北大路欣也と松方弘樹が出ているのだが、圧倒的に北大路の方に出番がある。というか第2部は北大路が主役で、最後の完結編も北大路がほぼ主役といっていい扱いである。
この二人はライバルとして売りに出され、初期の方は松方が劣った扱いではなかったが、ここで歴然たる差がつけられている。その後も北大路は大スターとなっていった。
この45年前の映画、通常の評価と関係ないところばかり思って観ていた。