短編集『黒い画集』所収。山での遭難を扱った小説。3人の男が鹿島槍ヶ岳に登る。そのうち一人が遭難死する。生き残った者の一人が雑誌に書いた、その体験談から小説は始まる。
書き手は初心者で指導者は山登りに慣れた男、もう一人は幾らか経験がある者。新宿から寝台車に乗ったのは、指導者が初心者に配慮しての措置だった。実際に登り始めると、経験がある筈のもう一人がひどく疲れたように元気がない。天気が悪くなり、指導者は道を間違え、とうとうへたばった男は動けなくなり、最後は死んでしまう。以上の経過が掲載された雑誌を遭難者の姉が読み、指導者のところに連絡してくる。死んだ弟の場所に行きたい、もっとも女の身で登山は無理だから、従兄に行ってもらう、案内を頼めるかと。指導者は承諾する。冬山に登る。
相手は登山に慣れている模様である。遭難した時と同一の経路を辿り、遭難場所に着いた後、相手は指導者に計画して殺したのではないかと問い詰める。遭難者を精神的に疲れさせ、一見親切そうに見えるが、疲れさせる工夫を色々したのではないか。ただ動機が分からないと言う。指導者はクレバスを密に作り、そこに相手が落ち込んでから、動機を教える。自分の妻と密通したからだと。それを列車の中でほのめかしたのでノイローゼになったのだと。相手はクレバスに押し込まれた。木乃伊取りが木乃伊になったわけである。
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