子供の時に教科書に載っていて読んだ作品。
戦前と違って国定教科書ではない。教科書によっては載せていないものもあったのだろう。ただインターネットによれば多くの人が教科書で読んだと言っている。ヘッセの作品を読みだしたのはそれからあまり経っていない時期だったろう。ヘッセと言えば『車輪の下』や『デミアン』その他などが全集や文庫で出ており、短篇である『少年の日の思い出』は教科書以来、見かけたことがなかった。
少年時代に蝶の収集をしていた男が物語る当時の挿話。隣に高慢ちきな少年がいてやはり蝶を収集していた。ある日珍しい蝶を手に入れたと聞き、その家に行く。誰もおらず標本になった蝶に見とれる。それを欲しくなり手に取る。誰かが来たので慌ててポケットに入れた。女中だった。蝶を出してみるとバラバラになっていた。帰宅し母に告げる。母は早くその持ち主に事情を話し謝れと言う。少年に会う。話して自分の蝶をみんなあげると言う。しかし相手は嘲笑するだけで要らないと言い、自分を見下げるだけである。語り手の少年はそれまで集めていた蝶を凡て潰す。知り合いの少年の物を盗むと言えば有島武郎の『一房の葡萄』と同じだ。『一房の葡萄』は1920年の発表である。この作品を読んで影響されたのだろうか。不明である。(「教科書名短篇、少年時代」所収、中公文庫、2016)
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