田中登監督、松竹、105分。
昭和13年、岡山県山奥で起きた大量殺人事件を基に小説が書かれ、それの映画化。元の事件は30人もの殺人で、近代史上最も有名な犯罪の一つであろう。
閉鎖的な山村で、戦争が始まっているのに主人公の男は肺病で徴兵検査をはねられる。これ以降村人から敬遠されるようになり、風習としてあった夜這いの相手の女たちから嫌われる。精神を病み、被害妄想に陥った男は村人に復讐を誓う。ともかく正常でなかったわけでその精神を十分追えなくても当然である。
数時間で30人もの人間を猟銃で射殺か日本刀で斬り殺した。実際の事件が元である。だからそれをなぞった部分もあり、また映画あるいは小説ならではの脚色がある。映画で田中美佐子演じる好意的な女にあたる実在はいなかったのではないか。またその他、実在者との対応が分かる人物でも映画内で事件の犠牲者になる(実際は逃れた)など変更がある。随分前にこの映画は観た。当時多くあった名画座での鑑賞である。覚えているのは、田中演じる娘が関係を持っても減るものじゃないし、とか言うところだけだった。その時の映画自体はあまり感心しなかったと覚えている。数十年ぶりに観て、映画後半の、時間をかけた虐殺の場面は凄惨を極めこれほど残酷な場面が続く日本映画は他にあったかと思ったほどである。実際にあった事件だから余計そう思うのかもしれない。
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