フランス文学者、評論家の中島健蔵(明治36年~昭和54年)の書いた、戦争終結までの自伝のようなものである。自伝のようなものとは、自分自身の生い立ちより時代社会を描きたかったと見えるからである。関東大震災の際の朝鮮人殺戮の記述がある。また第二次世界大戦中、シンガポールに派遣されてそこでの経験が書いてある。シンガポールで華僑の大量殺害があったとある。さらに向こうの人間から写真を見せられ、尋ねられた際、とっさに嘘を言ったなど。また、戦争が始まる前の日本の情勢などについての当時の手記が収録されている。 はしがきに岩波書店に勧められて、自分も書かなければ思っていたなどとある。今では過去の人となった評論家であり、目新しい情報もあまりなく一般的に大して面白い本ではないが、当時の知識人の意見、また出版当時の雰囲気が伺える。
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