著者は、昭和22年生まれの作曲家、大学教授。序章によれば音楽史の立場は二通りあり、一つは現在に至る音楽の流れを見る、すなわち過程を述べる物語である。もう一つは各時代の音楽様式を大切にして、その交代として音楽史を語る立場。本書は後者の考えで書いたという。つまり前者の考えによれば、過去は現在までに至る途中経過と見なす。それに対して後者であればそれぞれの時代の音楽様式は価値を持ち、それ自体として理解されるべきだと考える。もっともこう書けば、前者は価値の序列を考え、過去の価値は低いものとみなす考えであり、そんな立場を採用するはずもない。正直読んでいても、音楽史の本なのであるから変遷が書いてあるのは当然だし、「昔はこんなに幼稚で野蛮な音楽が作られていました」などと書いていないから、それぞれの時代の様式を尊重すると言いたいのか。
西洋音楽史としてグレゴリオ聖歌から始まる。それ以前は資料がないから。中世、ルネサンス、バロックまでで全体の半分近くを占め、現在クラシック音楽鑑賞の主な対象である古典派、ロマン派などが始まるのは全280ページのうち130ページほどになってからである。それまでは現代人にあまりなじみのない音楽の説明が続く。もっともそうだから読む価値があるのだろう。名前だけは聞いたことがある、しかしどんな音楽かイメージがわかないとか、そもそも知らない名前が出てくる。古典派になってから現代(20世紀の音楽)まで一つの章である。こういう歴史を書くと一番、問題になりやすいのは現在の取り扱いだろう。何しろまだ評価が定めっていない、これから変わる可能性が大きいからである。これまた古楽の時代の様に名前は聞いている、CDも持っている、しかし今でも評価されているのだろうかと思ったり、全く知らない名がたくさん出てくる。
0 件のコメント:
コメントを投稿