1906年に生まれ、人生のほとんどをウィスコンシン州の田舎で過ごした。母親は狂信的な信仰家であり高圧的人格の持ち主、父親の存在感が薄かったなど、他の犯罪者にも同じような事例がある。
母親は他の女のふしだらさを攻撃し、性愛を徹底的に嫌悪する教育をゲインに施す。その母親をゲインは崇拝し慕っていた。母親の死後、一人住まいとなったゲインは周囲の住民から気のいい男と見なされ、農作業の補助等に使われていた。
1957年に中年の酒場の女主人が失踪する。明くる1958年に雑貨屋の女主人をゲインが連れていく現場を目撃した男から真相が発覚する。ゲインの家に入り込んだ連中は、女主人の死体が屠殺場の動物のように吊り下げられているのを発見。更に前年失踪していた女の身体の一部も出てきた。それにとどまらず、かなり数の死体の破片がゲインの敷地から発見された。
ゲインに訊問すると墓場を発掘していたとのこと。実際に墓を開けてみると空であった。
殺人2件と暴かれた死体は凡て中年女性が対象であった。これはゲインの母親に対するアンビヴァレントな感情の反映であった。
死体を素にしたあまりに猟奇的な行為は全米を震撼させ、犯罪史上に名を残す。ゲインは精神異常とされ裁判では無罪、精神病院で77歳の天寿を全うした。彼を担当した保安官は40歳代で病死、裁判官もゲインより早く死んだ。
本件を基にした有名な映画が2件あり、精神異常面に注目したヒッチコックの『サイコ』、猟奇性を扱ったトビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』、と普通言われる。もっともフーパー自身は否定しているそうだ。
柳下毅一郎訳、ハヤカワ文庫、1995年
0 件のコメント:
コメントを投稿