2019年6月4日火曜日

吉川節子『印象派の誕生』中公新書、2010

マネとモネを論じる。特にマネが中心である。ルネサンス以来の伝統を革新した、近代の絵画である印象派がどのように始まったかを考察する。

まずマネを中心として有名な画家等が描かれている「バティニヨル街のアトリエ」(1870年、ファンタン=ラトゥール作)の説明から始まる。誰がどの画家等なのかの説明の後、絵にある静物等の意味するところが解説される。
続いてマネの有名な「草上の昼食」「オランピア」に移る。大醜聞を巻き起こしてこれらの絵は、伝統的絵画を真似ながら美術上の約束事を破り、当時の社会を批判したのであった。
更に「バルコニー」「鉄道」では人物たちはお互いに目を合わせず、近代の疎外、心の通い合いのない様を描く。

モネはアトリエでなく、戸外に出て日の光のもとで描いた画家である。印象派でいう印象とは、普通はモネの絵がまず浮かぶ。マネ自身も自分の印象を描いていると言っている。その印象とは近代人の心の闇であった。

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