2018年9月21日金曜日

レスコフ『封印された天使』 Запечатленный ангел 1873

宗教関連の作品の多い、ニコライ・レスコフの中篇小説。
ヴォルガ河畔の宿で、一人の男が皆に語る、天使にまつわる話。

かつて分離派教徒であった。その仲間とともにイギリス人の指導の下、働いていた。分離派教徒たちは、天使が描かれた聖像画を大切にしていた。そのうち仲間の一人がお調子者で、商人の妻にした予言がことごとく当たるので、すっかり信用を得た。それが仇になって商人が窮地に陥った際、聖像画を取られるはめになる。封印をされ、更に穴まで開けられる。
なんとかして取り戻したい。それには代わりになる聖像画が必要だ。それを作成できる聖像画描きを捜してロシヤ中を回る。犠牲を出し、ようやく見つけ、聖像画を描いてもらう。
しかし元の聖像画を見ると封印は剥がれている。この奇跡は教会のありがたい力であり、分離派教徒たちは正教に改宗する。なおこの奇跡の種明かしまで書いている。

ロシヤの正教についてはほとんど知らないが、ロシヤ文学にはよく出てきて、そういう意味では馴染みがある。その正教そのものを扱った小説で、話として面白い。
米川和夫訳、集英社世界文学全集第53巻、1980

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