2018年8月14日火曜日

横溝正史『真珠郎』扶桑社文庫 2000年


真珠郎―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)初出は昭和11年から翌年にかけて。
猟奇的な事件と犯人当てが主な要素の推理小説である。

語り手の大学教師はさして親しくなかった同僚の教師から誘われ、田舎の宿に行く。
湖畔にあるその宿は主人と姪の二人だけ住んでいる。しかし何やら怪しい雰囲気がある。女が土蔵へ通う。中に住人がいるように見える。

ある夜、美少年を見かける。それを宿の主人に話すとひどく驚かれる。湖にボートを乗り出している途中、噴火による地震が起きる。すると主人が美少年から攻撃を受けているのが見える。

犯人は被害者を連れて湖の洞窟へ行ったようだ。語り手、友人、女で追う。洞窟内では発見した主人は首なしだった。さらに友人が襲われる。負傷した友人を連れて逃げ出す。洞窟は満水になり後の捜査が不可能になった。

語り手が憎からぬ想っていた女は、友人と婚約した。傷心の語り手は帰京する。後に吉祥寺に新居を持った友人夫婦宅を訪ねる。ところが夜、惨劇が起こる。今度は新婦が犠牲になり、やはり首を切られている。
その後、残った友人にも災禍は及ぶ。老人の探偵がやって来て捜査し、真相究明のためにあの田舎の湖畔の宿に再び向かう。

犯人の意外性がある。もっとも推理小説を読みなれている者には目新しいとも思えず、見当がつくであろう。
戦前の話らしい謎の解明にあたっての要素、及び雰囲気がある。江戸川乱歩が激賞した作品である。推理小説で謎解きに関係ない恋愛要素は必要なかろう。この作品は語り手の恋慕による、おかしな行動が出てくる。こういうものは問題ないのだろうか。

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