2024年10月22日火曜日

ヴェデキント『地霊・パンドラの箱』岩波文庫 1984年

パプスト監督、ルイーズ・ブルックス主演の無声映画『パンドラの箱』及びアルバン・ベルク作曲の歌劇『ルル』の原作である。ルル二部作と呼ばれる戯曲で、世紀の変わり目の時期に発表された。日本式に言えば日清、日露戦役当時である。

主人公ルルはfemme fatale、妖婦の典型とみなされる。ただ男を食い物にする猛女ではない。著者もルルを「それが若くてかわいい印象を与えられるかを検討した」(解説、p.299~p.300)と書いている。上記映画のルルを演じたブルックスを見てもそんな感じである。男たちが火にいる夏の虫のようにルルに溺れ破滅していく。元の劇では会話で回想される、裁判の場面が映画にはある。最後に切り裂きジャックによって殺される。この連続殺人事件は劇が書かれた当時はごく最近であったわけで、同時代の出来事を劇に取り入れているのである。歌劇の『ルル』は多くの録音、またDVDも沢山出ており人気の作品となっている。

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