『ソロモン王の洞窟』『洞窟の女王』など秘境冒険小説で名高いハガードの歴史小説である。題名にあるようにクレオパトラを描いた小説なのだが、クレオパトラが主人公ではない。
語り手で過去を回想する、ハルマキスという男が主人公である。エジプトのファラオの末裔で神官の地位にある。エジプトをよそ者のクレオパトラが支配している。エジプト人はクレオパトラを嫌っている。それで本来のエジプトの支配者となるべき者だと、ハルマキスは成人してから初めて父親から告げられる。そのためにクレオパトラを倒し、自らがファラオだと宣誓する使命を達成すべく都に向かう。クレオパトラに仕える女官カーミオンはハルマキスに恋し、そのクレオパトラ打倒を助ける。クレオパトラと一対一になったハルマキスはクレオパトラを剣で倒すべきなのに、その色香に迷い失敗する。クレオパトラはハルマキスの企みを知っていたのだった。大失敗しただけでなく、ハルマキスはピラミッドにある財宝もクレオパトラの頼みによって、一緒に取りに行く。苦労して盗み出した財宝は凡てクレオパトラの物となる。クレオパトラは自分の恋するアントニーと一緒になり、用無しとなったハルマキスは捨てられ、今や全エジプト人の恨みを一身に集める敗残者となる。故郷に帰ると父親は死んでいた。
残りの章は如何にしてハルマキスがクレオパトラとアントニーに復讐をするかに充てられる。それが達成されたとしてもハルマキスはエジプトへの裏切り者、エジプトを地に貶めた罪悪人に違いはなく、その罪を背負わなければならない。(創元推理文庫、森下弓子訳、1985年)
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