著者はバブル期に大手都市銀行に入行、その後合併したメガバンクに今も勤める行員で仮名。銀行の内部事情が書いてある。銀行ではこんな業務をしているという紹介ではない。こんなに人間関係で、あるいは仕事で大変だという体験談である。
本書を読んで驚いたとか評があるが、正直全部ではないにしても、しんどさの大半は日本の組織であれば似たようなものではないか。上司が嫌な人間でひどい目に会ったとか、あるいは信じられないような卑劣漢が同じ支店にいて煮え湯を飲まされたなど、程度は違っても組織ならある話である。嫌な上司は勤め人の苦労するところだが、本書では全く人間性を疑うような罵詈雑言を部下に向かって言う上司が出てきて呆れた。銀行はエリートの集団ではないのか。
この著者は出世コースを外れた理由が分からないと言っている。営業がエリートコースで事務は外れたコースとのこと。泣いたとある。上司や同僚など外からの妨害が色々書いてあり、自分の無能や失敗はあまりないらしい。結構有能な人物なのだろう。いや一所懸命に仕事をしていれば自分が認められ、出世して当たり前と思うのは普通であろう。何か出世を俗物根性の現われであるかのように批判する評論家の類が昔からいるが、そんな事を言っていられるのは出世が目的かどうかは別にして、頑張って仕事をしている人間が大半だからである。今の日本の社会が外国に比べてましに暮らせるのもそのおかげである。組織で働いていて出世を望む最大の理由は、自己実現を図るためである。一日の大半をそれに費やして、認めてもらいたいと思うのは当然ではないか。
それにしても銀行員は昔から今に至るまで日本ではエリートと見なされている。それなのに日本の金融機関は世界的にみて大したことない。なぜだろう。ここに書いてあるような日本の社会横断的な人間事情では説明できない。
またシステム障害の話も書いてある。自分の従事した仕事は金融関係ではないが、やはりそれなりにシステム開発の必要があり、専門の会社に作らせたのだが全くいい印象がない。システムが素人には分からないからといって法外な金を取り、ひどいものがあった。システム障害で銀行が非難されるのは当然だが、開発した会社が欠陥システムを作ったからである。システム開発も社会基盤の産業なのだが、これに関して暗い気になる。
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