思想家大川周明(明治19年~昭和32年)の自伝である。初めに「安楽の門」とは宗教を指し、宗教的生活の回顧であると言っている。戦後の大川の印象と言ったら、民間人なのに戦争思想の鼓吹で極東軍事裁判にかけられ、ただし裁判中、前の席の東条英機の頭を叩き、精神異常で不起訴になり釈放された右翼思想家といったところか。ただし戦前はその盟友であった北一輝以上に名の知られた存在だったらしい。
執筆当時に近い、精神病院に収容されていた頃の思い出から始まる。精神病院でも安楽に暮らせると言っている。また拘置所で世話になった者を記している。一般的に本書は大川が尊敬した人物の名が良く出てきて、どう影響を受けたかの記述が目に付く。西郷隆盛、押川方義、八代六郎、頭山満などである。偉人を議論する場合、その業績、この大川のような場合は思想によって判断されるのであろうが、一人の人間としてどのように生きたかは同様に興味が深い。
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