既に始まっている人口減は、今後少子高齢化を一層促進させる。人口すなわち労働力の減少によって日本経済はもう成長が見込めない、悪化するとの悲観的な見方が支配している。
著者はこのような解釈に対して、経済成長を決めるものは人口でない、イノベーションであると主張する。
本書は経済学では人口をどう扱ってきたのか、またこれまでの人口動態はどうであったか、経済成長に人口はどう関わってきたのか、更には人間にとって経済とは何か、という根本的な問題も論じる。
本書によって過去の偉大な経済学者の人口に対する見方や、人口と経済についての知識が得られる。更に過去の著『高度成長』でも示されたように、読ませる、読んでいて面白いといえる筆力は魅力である。
労働力減少の議論で、必ず持ち出される外国人労働の受け入れについては、本編で語られず、後書きで簡単に触れているだけである。人口減少そのものをマイナスと捉える必要はないとする著者の立場からか、と思われる。
私見ではあるが、外国人労働についてはその「費用」をきちんと考えて議論すべきである。欧米でどれほど異人種間共存の社会コストをかけているか、知っていながら、あたかも抽象的な労働力としてか考えていない議論、とまで行ってない言い放しが多すぎる。欧米のように日本の将来が混乱することが、人口減少がもたらす(もたらすとして)生産減より望ましいのか。
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