松沢弘陽、植手通有、平石直昭編、1988~1994年にかけて丸山に対して行なわれた聞き取りをまとめた本である。
丸山の著作は多く出されているが、彼自身の生涯について自ら語った本書は次のような価値があると思われる。まず丸山の著作を理解する上で助けになる。またその生きた時代の一知識人(東大法学部の一員として)の記録として貴重である。
府立一中時代から始まり、映画や音楽などの趣味も含み、また世相や当時の学者等への論評など、同時代人でないとわからない、また通常の歴史には書かれることのない内容である。
(以下は一般論である)
丸山は戦後、ジャーナリズムでいわゆる進歩派として多く時事発言を行なった。更に戦後日本の政治学の創始者とも言うべき活躍をした。自ら言うところの専門の日本政治思想史より、それらの評論で有名なのである。
現在の我々は知っている。現実は進歩派の目指す方向に進まなかったし、それがどれだけ良かったことか。北朝鮮みたいな国にならなくて、今さらながら日本は幸福な国であると思う。
丸山を含む進歩派の誤り、間違いは指摘するまでもない。自明なのである。現実がそれを示している。
しかしそれでも丸山はいまだに読まれている。断簡零墨に至るまで出版されている。
なぜか。これが現在丸山を読む上での問題意識だろう。懐旧にふける人や現実を見ようとしない狂信的な丸山信徒だけが読んでいるなら丸山は終わっている。
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