2026年9月30日水曜日

松本清張『事故』 昭和38年

住宅街のある家に運送トラックが突っ込み、玄関などを壊した。運転手は居眠りをしていたと言う。会社の事故処理係がその家に赴くと、賠償は驚くほど少なくて済んだ。事故を起こした運転手は後に、山梨県で運送途中にいなくなり、死体で発見される。調べると殺されていた。しばらくして女の死体がやはり山梨県で見つかる。探偵社の調査員だった。この両事件の捜査は警察でも別の事件として扱い、調べたが共に迷宮入りになりそうだった。

小説後半で、探偵社の所長による説明がある。ある女から夫の浮気調査を依頼された。その夫は確かに他の女と関係があった。所長自ら調べたのは、依頼の女に興味があったからだ。実際にホテルで夫と情人が密会しているところを見つけ、所長は依頼した女(=妻)に電話で知らせ、女はそのホテルに来る。所長は女に会い、そこでかねてから関心のあった相手と関係を持ってしまう。これ以降、女と所長は密会を重ねていた。後になって、その女の夫、つまり所長が調べた男が探偵社に来る。所長は驚き、妻との関係がばれ殴りこんできたのかと思った。しかし実際は妻の素行調査だった。所長は男から自分がその相手である妻の浮気調査を頼まれたわけである。この調査を所長は部下の女調査員に命じた。

所長は女と会う時、ばれないよう余計に気を付けた。ホテルで会うと、女調査員に見つけられやすい。それで夫は家を留守にしていることが多いから、家で会おうと申し出た。その女の家に所長がいる時に、トラック事故が起こったのである。これは実は女調査員が企んだもので、近所に住む運転手にその家に突っ込むようにさせた。その際に驚いて隠れていた所長は飛び出し、近所の者らと共に張り込んでいた女調査員に見つかったわけである。女調査員は辞職を申し出る。真相が分かったからだろう。この女と運転手を亡き者にしようと、所長と今は情人になっている女で計画を立て、離れた場所で死体が見つかるように工夫し、殺害したのだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿