著者ピエール=フランソワ・ラスネール(1803~1836)はフランスの詩人、犯罪者である。著者が処刑される前、コンシェルジュリー監獄で執筆された。
強盗殺人のほか、多くの犯罪を行ない、死刑に処された。ただし本書は犯罪記録ではない。犯罪実録物を期待してもそんな書物ではない。まさにラスネール個人の内面を物語る近代人の告白録である。まず自分の家族、自分自身の生い立ちを話す。ラスネールには兄がいたが、両親は兄を可愛がり、ラスネールには冷たかった。いかに兄が溺愛され肯定され、自分は愛情の対象ではなかったか話す。自分が親に愛されていたらこんな人間にならなかっただろうと述べる。小説になるような劇的な人生を送っているわけでない。叙述は処刑寸前まで書いてあるが、最後の方はラスネールの執筆ではないそうだ。その方がもっともらしい。
0 件のコメント:
コメントを投稿