2023年6月6日火曜日

大下宇陀児『偽悪病患者』創元推理文庫 2022

大体、昭和一桁に発表された作品を収めてある。収録作品は以下の通り。

「偽悪病患者」/「毒」/「金色の獏」/「死の倒影」/「情獄」/「決闘介添人」/「紅座の庖厨」/「魔法街」/「灰人」/「探偵小説の型を破れ」/「探偵小説不自然論」。

最後の2編は評論。非常に趣向を凝らした筋になっている。兄と妹の書簡で真相が明らかになっていく『偽悪病患者』、子供の無邪気な視線で身内の毒殺を淡々と描写する『毒』、代表作の『情獄』、後の筒井康隆が書きそうな幻想に満ちた怪奇の街『魔法街』など、著者の才能を遺憾なく発揮した傑作集である。

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