『従妹ベット』と共にバルザック最晩年の小説。主人公のポンスは音楽家だが、生涯かけて美術品(絵画)を蒐集し、その価値は膨大であった。ただしこれはほとんど知られておらず、貧乏人と見なされていた。親戚の裁判長宅ほかに美食家のポンスは食客として度々訪れていた。しかし裁判長夫人はポンスを毛嫌いしていた。
後にポンスが紹介したドイツ人の資産家と、裁判長の娘が結婚する話が持ち上がる。資産家は相手が一人娘と分かって、わがままだろうからと結婚を断る。これに裁判長夫人は怒り狂い、凡てポンスの陰謀と罵りその悪評を広め、ポンスの評判は地に落ちる。
ポンスにはドイツ人の音楽家の親友がいた。ポンスも友人も極めて善人(というより世間知らず、鈍感と言った方がいいかもしれない)である。ポンスの下宿のおかみさんはポンスの所有する絵画に膨大な値打ちがあると知り、自分に遺産を残して死んでくれるようお為ごかしで画策する。ポンスの絵画は弁護士から裁判長夫人にも知れ渡る。何とかしてポンスとその相続人になっている友人を亡き者にし、その財産をわが物にしようと強欲な連中は躍起になる。最後には世間知らずの連中は破滅する。(柏木隆雄訳、藤原書店、1999)
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