本書は国際政治が専門の高坂正堯京大教授と、エコノミストの香西泰日経センター理事長の共著である。どういう構成かというと高坂と香西の論文が代わりばんこに出てくる。まず高坂が書き、それを受けて香西が書く、更に高坂が書く、といった風である。これは対談より優れている。対談は読みやすいが、目の前の相手に遠慮や迎合する可能性がある。よく考えて執筆する方がいい。
本書は1994年に出版されている。すなわちソ連が崩壊して5年後である。かつてのような体制優劣論争はなくなった。しかしながら日本を含む資本主義諸国は問題ないのか。いやおおいにある。当時は経済では米と日が中心で、それに欧州がEUを作り対抗しようとしていた時代である。今読むと、いろいろずれた議論がある。それはしょうがない。将来のことなど分からない。利点として当時の議論が分かる。ある時代の常識は少し時代が変わると全くそうでなくなり、後の世代の人は何も分からなくなってしまう。
読んで驚くのは、高坂が経済や財政の議論を随分しているのである。相手がエコノミストの香西だから教えてもらおうと思ったのか。自分の専門である政治や歴史の話をすればずっと優位を示せたのに。しかしながら極めて興味深い。高坂のような日本の最大限の知識人、ただ経済を専門としていない、が経済を論じるとどういう発想になるかの例を示しているからだ。そういう意味で期待よりずっと面白い本であった。
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