いわゆる社会契約説、ホッブズ、ロック、ルソーの思想、その諸前提の説明が主である。そもそも論と言うべき前提の説明から始まり、最後には現代での意義を語る。連続講演会を文章化したものであり、極めてやさしく解説している。話すとなるとどうしても例を多く出す。それで理解させようと務めている。ただそのせいで冗長な感を否めない。特に最初の方はそうである。もっと簡単に済ませ、社会契約説三人男の説明をもっと詳しく書いた方が良かったと思う。この講演は昭和43年に行なわれた。もう半世紀以上も昔である。結びは「遺産と現代」と題され、当時の著者の問題意識を書いている。著者は東大法学部教授でいわゆる進歩的知識人の立場からの意見である。だから親社会主義なのだが、次の文には驚いてしまう。
「・・・スターリン体制が容赦ない粛清の大へんな数の人名を奪ったのに対して、中国が「階級敵」に対してさえ、声明を奪うことしなかっただけに・・・」(p.187)
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