九州、門司の和布刈神社で旧正月夜中に行なわれる神事。これが小説の大きな要素になる。行事が行なわれる頃、関東の相模湖で殺人事件が起きた。被害者の男と一緒にいた女が行方不明になる。加害者かと疑われる。
『点と線』に出ていた刑事がある男に目をつける。しかしその男は和布刈神社の行事に行っていて写真まで撮っている。その行事の後、明くる日の旅館で撮った写真が続くネガフィルムがある。犯行時に九州に行っていたことになる。刑事はその男が真犯人だと疑わない。何らかのトリックがある筈だ。九州の旧知の老刑事に連絡して調べてもらう。更にその九州で新たな殺人事件が起こる。清張の小説でお馴染みの、犯人が都合の悪い人間をまた殺害するという展開になる。
犯人は分かっている。そのアリバイ崩しとフィルムの謎、消えた女の問題などが本書の謎で、それを解き明かしていく。清張は社会派推理小説家と言われ、本格推理小説とは異なる作家という印象があるが、本書はまさに謎解きを主とする本格推理小説である。本格推理小説とは理屈が通っていれば、非現実な設定、現実には有り得ない犯罪実行でも全く問われず、それでよしとされる。本書にはその分類が当てはまる。地方の行事や、今となってはない古い時代の風俗が出てきて、それらは清張の他の小説と同様である。
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