左翼の理論的指導者であった羽仁五郎の自伝というか、持論展開の書である。
題名には戦後となっているが復刻版全355頁の100ページを過ぎても戦前戦中の話をしている。羽仁の論は全く過去の左翼の言い分の典型で、昔左翼がどのような主張をしていたかの見本である。独占資本が支配する資本主義の国はだめで社会主義の国家、ソ連や中国を持ち上げる。今読むと滑稽にさえ感じられるが、昔はこのような主張というか雰囲気が世の中を覆い、大勢を占めていたのである。
羽仁はともかく社会主義が理想なので、敗戦の時革命が起きなかったのは、自分のような牢獄に囚われていた者を誰も助けに来なかったからだ、などと述べている。敗戦時に解放に誰も来なかったと何度も書いてあるが、三木清の獄死については三木の名は出てくるものの、あまり書いていない。羽仁が敗戦の日に解放されていれば日本は革命が起きて社会主義国家になったらしい。その他、色々な羽仁史観というか見方が書いてあり、今読むと懐かしく感じる。(スペース伽耶、2002年)
0 件のコメント:
コメントを投稿