2022年5月11日水曜日

百田尚樹『日本国紀』 2018

作家の百田尚樹が書いた日本史である。歴史に興味を持つ者は多く、これまで沢山の日本史が書かれてきた。その中には専門の歴史学者によらない書もある。本書もまたその例である。

本書の特色は何か。一読して思うのは、読み易いという点である。例えば明治維新の前後は日本史の中でも特に興味深い、重要な時期であるが、多くの人名や事件が出てきて統一的な理解が難しい。

一般的に言って歴史書はあまり読みやすくない本が結構出ている気がする。なぜそうなるのか。それは先に述べたように歴史好きが多いから、あまり分かりやすく書かなくても読んでくれる人が多いためと理解する。古い資料の解読といったかなり専門的な事柄でも歴史好きは読もうとする。しかしながら出来るだけ分かりやすく書いて欲しいという要望もあるはずである。本書は明治維新なども分かりやすく、理解しやすく著述してある。

本書のもう一つの特色は、その価値観の立場である。それは日本及び日本人を肯定的にとらえよう、評価しようとする立場である。およそ歴史記述は何らかの価値観、世界観を前提とする。どういった事柄を取り上げ、それをどう書くか、は一定の歴史観がなければ書けない。歴史とは現在の価値観による過去の再構成だからだ。本書は日本の歴史を批判的に理解する立場とは全く逆である。特に戦後日本の記述である。ここの書き方は多くの歴史書と異なっているのではないか。それが最大の特色と言えるかもしれない。(幻冬舎刊)

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