2021年5月10日月曜日

ノーソフ『ビーチャと学校友だち』 Витя Малеев в школе и дома 1951

ソ連時代の児童作家ニコライ・ノーソフの作。少年が友だちと学校や家庭で送っている生活を描いた小説。主人公の語り手ヴィーチャは転校してきたシーシキンと仲が良くなる。もちろんヴィーチャも勉強が嫌でできれば遊んでいたい、好きなスポーツをしていたいと思っている。しかし先生や親に言われ、勉強するようになる。それに対してシーシキンは頭が悪いと思い込み、動物の飼育に熱心ながら勉強はできないし、やらない。さぼって学校に行かなくなる。ヴィーチャは頼まれて学校に行っていない事実を隠している。嘘をついているわけだが、友達を裏切るのは良くないという発想である。誰かが悪いことをして、それを知っていても先生等に言わない。仲間を裏切る告げ口とみなしているからだ。この考えについて妹と口論する。この悪い事であっても裏切りは良くないという発想、西洋の映画などでもこういう議論が出てくる。メリメの『マテオ・ファルコーネ』もそうだ。日本人はこういう「葛藤」はないような気がする。それならなぜか。どちらがいいかの問題ではない。

大人が読んでも色々考えさせる。残念なことにソ連時代の制度を背景とし、スターリン賞をとったという今では悪いだけしかない章を受けている。ただ『クオレ』や『飛ぶ教室』などとおなじ系列の話で今でも面白い。著者は今では『ネズナイカ』の作者としてまず説明される。

福井絢介訳、平塚武二文、少年少女世界の名作文学第37巻、昭和42

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