長い間ローマ軍に包囲されており、勝てる見込みはなくなっているヌマンシア市民たちはなんとかして打開を図る。一騎打ちで勝敗を決しようと言う提案はローマによってすげなく却下される。食事さえなく飢えや疫病の実態、恐怖が全市を覆っている。恋人に与える食糧を奪うため、決死の覚悟で敵方の陣地に切り込む戦士たち。
もはやこれまでと悟ったヌマンシアの市民たちは凡ての財物や家々を焼き払い、自決する。勝者のローマ軍が乗り込んできても全市民が亡くなっている。これでは勝利にならないとスキピオは嘆く。
敵に屈せぬ誇り、愛国をうたった悲劇である。18世紀まで出版されなかったが、19世紀以降は上演されている。自国の武勇を主題とした、戦後の日本ではあまりに縁の遠くなった題材である。
牛島信明訳「スペイン黄金世紀演劇集」名古屋大学出版会、2003年所収
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