2019年1月24日木曜日

正宗白鳥『何処へ』 明治41年

著者29歳時の作品である。正宗の代表作の一であろう。短篇である。
主人公は雑誌記者を勤める若い男で、周りのものをなんでもくだらないと批判しているだけである。著者自身の自伝的要素、あるいは感情や意見表明と思われる。自然主義文学がいかにつまらないかを知りたければ正宗を読めばよい。

正宗といえば明治以来の文学者の中でも著名人の一人で、昔日本文学全集が組まれる際、その中の一巻を占める場合が多かった。それがこれほど面白くないとは驚きであった。
なぜかつては評価され読まれていたのか。それは文学に志ながら全く名を上げる道がない、本人としては不遇としか思えない文学青年が多く、それらの共感を得たからではなかろうか。

読んだ全集には『人生の幸福』という戯曲も入っており、これには妹は死んだほうが幸せだと言って妹を殺そうとする兄が出てきて、あまりの非現実さというか馬鹿馬鹿しさに呆れかえった。この本は伊藤整が解説を書いていて、作品解説のところで、収録されていない小説を書いている、これもおかしいではないか。
正宗は創作より評論が優れているそうである。確かにこんな作品を読めば、評論はまだましなのだろう。
文芸春秋、現代日本文学館、第12巻、昭和44

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