2019年1月31日木曜日

松本清張『小説帝銀事件』 昭和34年

昭和231月、帝国銀行(三井銀行の戦時中の名)椎名町事件で起きた大量毒殺殺人事件(16人が被害、12人死亡)を、昭和34年に清張が小説化したもの。
小説帝銀事件 (角川文庫)
小説と言っても事件と捜査の記録が大部分を占める。
読んでいてやや退屈になるような検事調書まで長々とあって、その後、清張の分身と思われるジャーナリストが事件について推理をめぐらすという構成である。

現在では冤罪が当然視されている状況であるが、逮捕当時は全く逆で、未聞の大量殺人事件であり、ジャーナリズムの影響によって、真犯人と盲目的に信じられたという。
現在では多数意見に同調という風潮は全く変わらず、冤罪説が支配的になっている。

清張の推理のうち、事件当日、丸の内の義理の息子を訪ね、そこから椎名町まで犯行時間に行けたか、アリバイの検証が推理作家らしい。
平沢真犯人の決め手となるのは事件直後の大金である。それまでカネで困っていた平沢がいきなり大金を持つようになった。銀行から盗まれた金でないと証明できない限り、無実と主張できない。無実説は犯行の手口からして毒薬に慣れた者しかできず、旧軍人が犯人だと主張する。

正直、いつ頃からどういう理由で冤罪説が主流となったか知りたく思う。
帝銀事件の最大の特徴は、捕まえた刑事よりも死刑を求刑した検事よりも死刑判決した裁判官よりも、平沢が長生きしたことである。日本の司法を揺るがす事件であった。
角川文庫、昭和36

0 件のコメント:

コメントを投稿