帝銀事件は長期に渡って語られてきており、関連書籍も多く出ているが、冤罪とみなすものがほとんどである。というよりまず冤罪と前提し、そこから論を始めるといった著作が普通である。
本書はその中で平沢有罪説を主張しており、そういう意味で希少価値がある。自分と同意見の本でなければ読まない人は多いが、政治的意見ではなく、事件の真相解明であれば反対意見も聞いた方がいいだろう。
また本書の特色はその形式にもある。本書は読み物風に書かれていない。レポート形式と言ったらいいか。要点を書きその理由を述べるといった感じで、こちらの方が中身の把握にはいいのかもしれない。しかし本を読む楽しみとは離れており、学習参考書のように感じる者がいるだろう。
それでは読んだ感想とはどうか。正直、期待したほどではなかった。最後の「おわりに」を読んですむ。それ以前の記述は、例えば著者の専門のせいか(薬学部卒)、毒薬についてなど専門的事項が長々と続き、多くの読者は退屈してしまうだろう。そもそも著者は民間会社の社長であり、物書きではない。そのためやや素人臭い文章である。
色々書いたが、冤罪説が当然視されているなか、本書のように異なる意見の書がもっとあってもいいと思う。東京図書出版会発行。
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