2017年10月16日月曜日

ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』 The Bishop Murder Case 1929



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ヴァン・ダインによる探偵ファイロ・ヴァンス物の、『グリーン家殺人事件』に次ぐ第4作。グリーンとならんで傑作の呼び声の高い作品である。
ニューヨークの数学者宅で、殺人事件が起こる。被害者の名前にかけて、マザーグース童話にのっとった殺人であった。それに続いて同様のマザーグース殺人事件が、次々と同家周辺で起こる。マザーグースという童話集が、結構残虐な側面を持っている事実は有名であろう。この小説はそれを十二分に活用して推理小説として面白い出来になっている。

事件の関係者は数学者または物理学者、及びチェスの達人である。題名の僧正とはチェスの駒がこれらの事件で象徴的な役割を果たすからである。
推理小説としての要件を満たしており、古典の一つになっている。もっとも今の自分には子供の頃読んだような感心は持てなくなっているが。

ところでこの小説の登場人物が前述のように数学や物理の専門家とあって、当時としては新しい学問だったはずの、相対性理論や量子力学の話題が出てくる。その辺り今回の読み直しでは、昔感じられなかった面白味に思われた。今では聞かなくなった名や?と思われることが書いてあるのはそれで面白い。発表された時代は、あのウォール街株式大暴落の前年であり、金ピカ時代、今の言葉で言えばバブル期である。
井上勇訳創元推理文庫、1959

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