2017年10月10日火曜日

志村有弘『戦前の猟奇残虐事件簿 』河出文庫 2011年



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戦前に起こった猟奇事件の雑誌記事を著者がまとめ編集したもの。8件の事件が掲載。
「稲妻小僧」は脱獄犯で身内に残虐な復讐をした男であるものの、見た目が良かったせいか自分が関係した多くの女達に、処刑後同情された坂本慶二郎(明治28年)。
「記憶なき殺人」は、色男の馬丁が女房を懲らしめようとすると既に死んでいた。その遺体を棺に入れて森に隠そうとする。そこから殺しの容疑がかかる。馬丁が獄死した後、実際の犯人小林只四郎が捕まる(明治30年)。
「少年臀肉切り取り殺人事件」は、身内の癩の治療用に、少年の臀部を切り取るという猟奇事件から騒がせたが、犯人野口男三郎はその身内殺し(本人否認)、薬屋殺しで処刑された(明治34年以降)

「まぼろし小僧」展覧会に出された裸婦彫刻が上流階級の夫人に酷似とわかり、その犯人の捜査がなされる。また日露戦争後の成金の邸が続けて襲われる。同一犯の犯行とわかるが、その美貌の青年西田龍太郎は帝大生で、大学教授未亡人の令嬢と婚約中であった(明治41年)。
「汚職殺人鈴弁事件」は農商務省のエリート官僚、山田憲がカネに困り、米騒動で米の買い付けの特権を利用して、商人鈴木弁蔵を殺しカネを取る(大正8年)。
「淫殺魔」が大正末期の強姦殺人鬼吹上佐太郎の話。多くの少女を陵辱殺人し、陵辱だけで終わった件はどれだけか不明(大正12年)。この吹上については本ブログでその自叙伝の要約を示した。

「説教強盗」は強盗に入った家で、家人に説教(いかに侵犯されやすいか)をしただけでなく、多くの婦女を強姦したと言われる妻木松吉(昭和4年)は戦後釈放された。
「贋造紙幣殺人事件」は東北で起こった贋造に関わる殺人事件で、土地の有力者たちが犯人であった(昭和5年)。

時代を感じさせる事件は興味深い。

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