著者は戦前活躍した検事、戦争中に検事総長まで上りつめた。その犯罪回想録である。
定本は昭和45年刊とあるが、著者は昭和30年に亡くなっているので、20年代の著作だろう。
戦前の犯罪のありさまがわかって興味深い。犯罪や捜査への見方は著者個人のものであるが、現代からみてどの程度変わっていないか、変わっているのか、不明である。
ここで述べられている犯罪には、現代では歴史となった津山事件とか、あるいは大正時代の連続強姦殺人魔の吹上などがある。当時どう見たか、扱ったか貴重な記録である。歴史の教科書に出てくる米騒動の鎮圧模様などは、犯罪というより広い意味での同時代史となっている。もちろん多くの事件は全く知らない。
今まで幸いに犯罪に関わりあわず人生を過ごしてきたが、こういう犯罪記録を読むと、被害者をはじめ、犯罪という不幸に巻き込まれた人たち(現在では多く鬼籍に入っているだろう)を思い、人生を深く考えさせられる。
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