2017年9月17日日曜日

筒井康隆『文学部唯野教授』(岩波同時代人ライブラリー) 1992



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原作は19871989年に発表。
早治大学文学部教授唯野を主人公とする本小説の流れは二つある。一つは大学文学部の実態、というか大学教授たちの俗物、非常識ぶり。もう一つは唯野が担当する講義「文芸批評論」をそのまま記述。後者は学説の紹介なので、勉強になると思う人もいるだろう。
この大学文学部の醜態、というより狂態の様は異常である。教員すべてのあまりの俗物ぶり、人格劣等ぶりは目に余る。正直漫画の世界である。
大学教授には奇人変人が多い、とは知っている。しかしここで描かれる教員たちは、奇人を通り越して癲狂院の住人かと思ってしまう。文学だし筒井康隆の小説である。真面目に言っていてもしょうがないだろう。

唯野教授担当する文芸批評のところは先に述べたように学説の講義である。印象批評、新批評、ロシア・フォルマニズム、・・・構造主義、ポスト構造主義まで。ためになる、面白いともいえる。
しかし正直言おう。ここで述べられている多くの批評論、文学をあれこれ解剖する話、大学で研究するような「学問」か、と思ってしまった。個人的としてこういう議論が好きな者がやっていればいいのでは、という感じ。文学部の教員たちがおかしいのもやっている研究がこんなもののせいか、と勝手な理解をしてしまった。
 
唯野教授はまともな者として描かれているが、若者に媚びて軽薄極まる言葉使い、若者文字などを使う。若い恋人に軽蔑されるのは当然で、こんな言葉を使う教授を学生たちが評価するはずもない。

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