原作は1928年に発表された。ヴァン・ダインの推理小説の中でも傑作と言われている作品。
ニューヨークの河畔に立つグリーン家の古い屋敷。互いに憎み合う家族。膨大な遺産を相続するためにはその屋敷に住む必要がある。陰惨な殺人事件が次々と起こり、家族はどんどん減っていく。犯人は誰か。
極めて古典的な推理小説である。犯人当ても難しくないかもしれない。しかしむやみに複雑にして読者を煙に巻く作品より好む人がいるかもしれない。
より現代の推理小説は話が複雑になり、推理小説の部分よりもそれ以外が大きな要素となっている物が多い。登場人物の恋愛関係や作者の調べた知識を延々と聞かされたり。時代が変わったからそれで新しい仕掛けを作れるだろうが。
正直に言おう。「本格」推理小説ほど子供だましという言葉が似あう分野はない。子供の時は関心をもって楽しんで読めたが、大人になるとその非現実さがあほらしくなってくる。可能性としてできる、が100%できるとなって(現実には確率的に非常に低いはず)、犯人はやすやすと殺人を犯す。探偵の推理ときたら、これまた一つの可能性に過ぎないものが悉く当たる。荒唐無稽の世界である。ホームズの推理を感心して聞くワトソン、まるで漫才だと評した作家がいる。それを薄めるため推理以外の部分が大きくなってきたのだろう。
大人になってもトリックや犯人の意外性などを楽しめる人は幸せである。
この作品も子供の時に読み、何十年ぶりかの再読である。実は子供の時より今回の方が読んで感心した。なぜか。当時この小説の前にクイーンの『Yの悲劇』を読んでいた。クイーンの小説は本作の4年後の発表である。明らかに本作の影響を受けている。しかし『Yの悲劇』を先に読んでいたため、当時は似たような小説だと思って、それほど感心しなかったのである。
今回の再読は『Yの悲劇』への影響もよくわかり、推理小説としては先に書いたように、古き良き時代の単純な設定を楽しめた。
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