非常に評価されている女流小説家がいる。ただしあまり売れない。その作家宅で食事会が開かれている。上流階級、出版関係が集まる。作家の夫は会社員で全くパッとしない男である。食事会の費用は夫が受け持ち、いつも食事会に出る。しかし退屈な男でみんな相手にするのが苦手である。
ある日驚くべき事件が持ち上がった。夫が作家の妻を捨て、料理人と逃げたのである。食客一同、なんとしても夫を取り返すべきだと主張する。行先も書置きにあったので、そこへ作家は行く。夫は料理人とよろしくやっており満足気である。夫は料理人と共に探偵小説を愛読しているという。探偵小説を書いたらどうだと妻に言う。探偵小説なんて読んだこともない。そこを出て帰宅中、そういえばポーは探偵小説の始祖で、ポーも書いているくらいだ、とだんだんその気になってくる。(白須清美訳、「短編ミステリの二百年1」新潮文庫、2019)
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