2022年7月10日日曜日

ハムスン『ヴィクトリア』 Victoria 1898

『飢え』で知られるノルウェイの作家クヌート・ハムスンの純愛小説。いわゆる身分違いの恋の悲劇を描く。青年ヨハンネスは粉屋の息子、ヴィクトリアは館に住む上流階級の娘であり、幼馴染であった。小さい時からお互いに好意を持っていた。長ずるに及んで、身分の違いがはっきり分かる。恋愛なら普通に見られる、お互い感情を隠して本心と違った言動を取る。

ヴィクトリアは財産が乏しくなっている家を助けるため、金持ちの青年と結婚してくれと父から頼まれる。これは後になって判明する事実。ヨハンネスは恋する男なら珍しくない、相手が自分を思ってくれないとすねた行動に出る。ヴィクトリアは不本意な男と婚約する。その相手は後に事故死する。その間、ヨハンネスは別の女と結婚の約束をする。相手がいなくなったヴィクトリアだが、ヨハンネスは婚約していると告げる。しかしそのヨハンネスの婚約相手の女も、心変わりして別の男と結婚する。ヨハンネスは作家として名を挙げる。ヴィクトリアと会っていなかったヨハンネスだが、ヴィクトリアが危篤だと聞かされる。更に死んだらヨハンネスに渡してくれというヴィクトリアからの手紙を受け取る。すなわちヴィクトリアは病死したのである。その遺書にはヨハンネスに対する恋情が綴ってあった。

現代ならまず誰も書かない小説である。しかし19世紀末のノルウェイの小説であるからそれで読む小説であろう。(富原眞弓訳、岩波文庫、2015年)

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