今村昌平監督による白黒映画。
記録映画風の体裁で始まるが、普通の作りでない。かなり特殊。
蒸発とは懐かしい言葉だ。いわゆる失踪をこう言った。高度成長期のある時期の流行語である。理由も告げず失踪してしまう現象が社会的に話題になった。田舎から都会への人口移動が激しい時期であり、社会が大きく変わっていった時代であった。
失踪してしまった婚約者を、女性が捜す記録映画として始まる。当時知られていた俳優が協力して共に捜す。家族や勤め先、取引先の証言。そこで婚約者がかなり思い込みと異なることが女性にわかってくる。次第に婚約者への情熱は醒め、一緒に行動する俳優への関心が高まる。
実姉への疑惑が出てくる。姉が婚約者と一緒に歩いていたとかの店員の証言。姉は一貫して否定する。最後はその路上で女性、姉、店員、俳優その他関係者が言い合いになって収拾もつかない。
かなり舞台裏も示し、監督も登場しこれはフィクションと言う。現在ならプライバシーの観点から撮ることもできないし、上映され危ぶまれるだろう。
そういう意味でも貴重な映画かもしれない。
0 件のコメント:
コメントを投稿