2017年1月7日土曜日

林房雄『大東亜戦争肯定論』中公文庫 2014



 商品の詳細
元々中央公論誌上に昭和38年から40年にかけて発表されたもの。
著者林房雄については、元左翼で保守派に転向した評論家、作家くらいの知識しかなかった。著書を読むのは初めてである。
題名を見て、保守派であるからこの前の戦争を肯定的に評価している著かと思っていた。読んでみるとかなり印象が異なる。もちろん左翼よりと言うより、戦後主流となっている侵略戦争視に与しない、という点ではそうかもしれない。

題名は大東亜戦争再考とでもすべきである。当時の主流に対する反発から挑発的な題にしたのかと思ってしまう。
本著は戦後太平洋戦争と言われるようになった戦争のみを論じているわけでない。幕末から昭和20年の戦争終了までを「東亜百年戦争」と捉え、著者の戦争観、歴史観を述べている。つまり19世紀以来の欧米のアジアへの進攻という歴史の中で日本の対外政策、戦争を論じているのである。
なにしろ幕末から筆を起こしているのだから様々な人物や出来事を取り上げており、その著者の見方に賛成するかどうかは別にして、教えられることが多かった。

正直、時代が下るほど事実認識の点で今では書き直す必要のあるところは多いと思う。

この論考が初めて発表された頃は今では想像できない位、左翼的思想が支配的であった。必ずしもマルクス主義ばかりでない。進歩派と呼ばれていた識者の多くはマルクス主義ではなかった。当時の受け止められ方は今ではわからない、過去とはそういうものである。
今読むと当時よりかなり説得的であろう。それは社会主義諸国が崩壊したからでない。(日本の)左翼が時代遅れの論を繰り返しているだけで、何も現実に対する処方を示すことが出来なかったからである。
左翼は過去の日本を断罪して良心的なふりに汲々するのでなく、説得力のある、保守派が読んでも感心できるような歴史書をものにすべきである。

0 件のコメント:

コメントを投稿