五所平之助監督による戦時中制作の、幸田露伴原作の映画化。大映、白黒。
冒頭有名な「撃ちてやし止む」の標語のあと、題名が出ていきなり映画が始まる。スタッフや配役の表示なし。戦争中でフィルムが不足していたからとのこと。
大工の十兵衛は、腕は確かだが無口の偏屈者。
谷中の寺で五重塔の建設が決まる。親方は腕を鳴らしている。しかし十兵衛も五重塔の建設が宿願であった。小型の模型さえ前から作っていた。彼は一人で寺の上人に直訴する。模型を見て上人も感心するが、親方と十兵衛二人を寺に呼び寄せる。上人は二人で相談して決めろと言い渡す。親方は共同制作を提案するが十兵衛は嫌だと断る。親方は太っ腹を見せ十兵衛に五重塔の建立を譲る。更に家に伝わる塔建設の資料も貸そうと申し出るが、十兵衛はこれも断る。
単独で五重塔を建てる。完成後まもない時期に暴風雨が襲う。塔は大丈夫かと僧たちは心配する。十兵衛は心配していないが塔に来る。既に親方が来ていて問題ないと言う。
嵐が明け、聳える五重塔。
主人公とその妻は溝口健二の『残菊物語』で共演した花柳章太郎と森赫子が演じている。
主人公は日本人が想定する職人そのものに描かれている。無口で不器用だが意志は強く譲歩しない。戦時中の制作ということもあってつべこべ言わずに仕事に打ち込めという説教が強調されているように見える。
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