著者は日銀に勤務したエコノミスト。黒田元総裁の金融政策の評価を初め、日本経済について言われれている通説を批判し、読者に益するところの多い著である。
特に黒田日銀の政策についての見解は感心した。黒田元総裁はいわゆる異次元の金融政策を実施して、当時デフレ下にあった日本経済を、2年間で2%の物価上昇率を達成すると言明した。しかし10年間経っても2%の物価上昇率は実現できず(現在インフレ気味であるが、これは海外要因によるインフレであり、目指したのは賃金、物価の国内要因によるインフレである)、どう見てもその政策達成は出来なかったというしかない。それなのに、黒田元総裁の異次元金融政策について一般にあまり批判はない。なぜか。
それは黒田元総裁の政策は出来ることを凡てやった、その前の白川元総裁のように政策を出し惜しみしているような印象を与えなかった。黒田元総裁は全部やった、やり尽くした、手加減はなかった、それが評価されているという。普通、マックス・ウェーバーを持ち出すまでもなく、政策はあくまで結果によって評価されるべきであろう。ところが結果は出さなかったが、手加減ぜずやり尽くした点が評価されているという。日本では結果は出さなくともその姿勢だけで評価する国なら、努力する姿勢だけで、結果がどうでもいいというのは本当は困るのではないか。
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