自分にとっての歴史の関心は、なぜそのような出来事が起きたか、後の歴史にどのような影響を与えたか、である。しかしながら出ている多くの歴史本は、過去の事実が並べられているだけに見える。過去の出来事それ自体に興味がある、知りたいという人向きで、自分には退屈である。
ところがこの小谷野の本では歴史の出来事などは偶然で起こったに過ぎない、だから歴史は事実を並べれば良いと宣言している。本書は歴史の事実だけを述べた本で、そういう意味では今までの歴史本の延長か。しかしながら本書を読めばそういう気は起きない。
現在の歴史本が事実の列挙を基本とするのは、かつて支配的だったマルクス主義の歴史理解に対する反発の要素がありはしないか。マルクス主義歴史理解のように歴史に大法則があるなどとは愚の骨頂で、かつてこんな馬鹿馬鹿しい考えが支配的だったとは信じられないくらいである。イデオロギーによる歴史理解というか断罪は論外だが、歴史は事実だけでは記述できない。そもそもどんな事実をとりあげるか、それをどう記述するかには何らかの世界観、価値観が必要だからである。事実だけ述べればよいなら、年表だけにすればよい。
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