明治十年代後半の東京から始まる。歌舞伎役者の花柳は名人の父の七光りでもてはやされている。陰では演技が酷いと散々な評判である。たまたまその悪評を耳にして腐って色茶屋から帰る途中、森に会う。森は花柳のまだ赤ん坊である弟の乳母をしている。森は花柳の演技に対し、正直な感想を述べ、精進の必要を説く。初めて真摯な意見を言ってくれた森に感謝する。森に好意を持つようになった花柳は、花火開きにも行かず家で森と西瓜を食べていた。
花柳と森の仲を見た親は森を解雇し、花柳を近づけないようにする。花柳は大阪へ行って芸の修行をすることになった。森はついていくことは叶わなかった。
大阪でも花柳は十分な上達が出来ず、贔屓にしてくれた叔父が亡くなると大阪の劇場を馘になる。森は後から大阪に来て花柳を支えていた。花柳と共に地方回りの旅に出る。数年しても苦境が続く。花柳のいとこが名古屋の劇場で公演するとわかった。森は花柳にいとこに話すよう説得する。花柳は落ちぶれた身で会いに行けないと言う。森が一人で会いに行き、花柳を舞台に出させてくれるように頼む。承知してもらうが、森が花柳と別れるという条件の下だった。
花柳の舞台は大成功をおさめる。これなら東京へ戻り父親にも許してもらえると折り紙がついた。東京へ行く列車で森がいないので花柳が捜す。親戚の者は自分が森にそうさせたと告白する。花柳は怒るが、芸に上達し成功するのが森への恩返しになるのではないかと諫められる。
東京でも成功し、親とも和解した花柳は大阪へ凱旋巡業する。
森は花柳と別れてから、大阪でかつて住んでいた家に世話になる。しかし病が高進していた。大阪へ花柳が来る。森のいる家の親爺は、森が止めたのに花柳のところへ行き、森の病状を話す。直ちに花柳は森に会いに行く。親も許してくれ晴れて結婚できるという花柳の言葉に、森は感激する。早くお披露目へ行けと花柳を急かす。早く戻ってくるからと言い残し花柳は出る。花柳は船の舳先でお披露目の挨拶をする。その間、森は亡くなっていた。
昭和14年作で画面が古く音も聞き取りにくいところがある。同じ年の「風と共に去りぬ」や「オズの魔法使い」とはえらい違いである。
全体として感情を刺激する出来になっているのは戦前の映画らしい。
今回の鑑賞は三回目でいづれも旧フィルムセンター、現国立フィルムアーカイブである。
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